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文化・芸術

2013年2月26日 (火)

夕霧に消えた恋 6

叔母の季華子は既に来ていて、表面は優しく振舞っているが、敵を迎え撃たんばかりの気迫が感じられた。

叔母は、優、こちらに来て、見てごらん、美人で気品があって、ステキなお嬢さんよ、驚かないで。

母は、少し、おどおどした様子で、

そんな、来た早々でなくても、お茶でも飲んで、ゆっくり拝見すれば良いじゃないの。

優だって、相手のお嬢さんが、何処のどなたか全部お聞きしているわけではないし。

そんなの、全部、きのう渡したじゃないの、写真の裏にも書いてあるわよ。

昨日の事でしょう、朝から晩まで見ている訳じゃないし、あなたからチャント説明して頂かないと。

その方がいいわ。

ハイ、ハイ、わかりました。

そんな、揉めてないで、僕は今日、友達と会う約束があるので、写真を拝見したら、失礼するよ。

一瞬、空気が張り詰めたが、叔母は、覚悟を決めたように、母に言った。

じゃ写真を持ってきて。

母は、藤色の風呂敷包みから、A4版の白い封筒を取り出した。中から、それらしく装丁された見合い写真

を優の前に差し出した。

こちらは洋装だけど、ハイご覧になって。

叔母が写真の上に掛かっている半透明のバラフィン紙をめくった。

あっ、これは、と声にならない。

優は絶句した。

2013年2月21日 (木)

夕霧に消えた恋 5

母が尋ねて来てドアを開けた時、優は虚を衝かれ、何となく険悪な感じだったが、此の場は、ひやひやしながらも、どうやらクリア出来たようで、優はほっとした顔をし、途端に明るくなった。

母さんどうしたの、暫くぶりに友達との食事会で疲れたのでしょう、紅茶飲む? まだ、残っているから暖めてあげようか、美味しいよ。

夫には優のアパートにいること、今から帰るからと連絡した。

夫は、久しぶりだから、ゆっくりして来てもいいよ、と言ったが、探偵に来たみたいで、何となく落ち着かないし、気まずい思いがして、帰ることにした。

母さん送っていくよ。

駅はすぐそこだし、大丈夫よ。

部屋を出ると暗くなったが、霧はすっかり上がっていた。男の一人住まいって、そんな匂いがするものだと思っていたけど、優の部屋には男臭さはなく、さっきの紅茶に入っているらしいバラと、やや、百合が入り混じった、いい香りがしていた。

紅茶カップと部屋の匂いについては、疑問は残るものの、優の日常についての情報は結局、何も得るものは無かった。

優は気の重い朝を迎えた。

今日は、見合い写真を見るため、家に帰ることを約束した。

去年、母が来た時も母のいる間、自然体の心算でいたが、俗に女の感性で何かを感じるのかな、疑っている表情がありありだった、何かに気付いただろうか、この事は一生、胸のうちにしまっておこう、これは宿命だと思う。

打ち明けたとしても、バカバカしいと相手にもされないのが落ちだ。

しかし、世の中、他人が笑うようなことでも、本人にとっては、命より大切な事ってある。

何より今回の写真の件、うまく逃げ出せるかな、写真を見れば、本人を見なければ判らないわよ、一度、会って見たら。となるだろう。その時は友達に急用だからすぐこいと、電話してもらうかな。

叔母は、今回で結婚話は最後だけど、写真だけは見て頂戴と言っていたそうだから、両親にも叔母にも迷惑かけたが、最後だと言うんだから、そうしよう。

いずれにしても断るしかない。約束したのだから。

決心して、ぼつぼつ、でかけるとしょう。

家まで、乗換えがあったりして1時間以上かかる。その間に今後のことも含め作戦を考えよう。

作戦といっても、これと言って妙案があるわけではない。対策としては、あと何年かは、独身時代にやっておきたいこともあるし、今は結婚する気は無い。

出たとこ勝負だけど、これでいこう、これしかない。

しかし、あれこれと、攻めて来るだろうなぁ。

2013年2月18日 (月)

夕霧に消えた恋 4

この町には大物の政治家がいるとかで、駅間が短く、ここに駅が出来る計画は無かったが、大物政治家の力で可愛い駅ができた。快速も止まらないし、乗降客も少ないので其の内、鈍行も停車しなくなるらしい。

無人駅に近い小さな駅だが、優が毎日乗り降りしているのかと思うと、なんとなく愛おしく思う。

駅を出ると夕霧はだんだん薄くなり、少し風が出て、優の住んでいるアパートの近くまで来たとき、霧は殆んど消えてしまった、折角の良い雰囲気だったのに。

電話をすると、優は例によって、とくに変わったことはないので来なくても良いと言う。

前まで来ているの。

10米の近くまで来て、帰るわけには行かない。

ノックをすると、ドアが開き、優の顔がのぞいた。

優は、何かを気遣うように、なんとなく周りを見回しながら、

ずい分早いね、さっき何処から電話した、なぜ連絡しないんだ、と

優にしては、珍らしく、少し怒った様な、慌て気味の早口で言った。

紅茶のバラらしい香りがプーンと漂ってきた。

どなたか来ているの?

いや、誰も来ていないよ、早く入ってよ。

食事会の帰りに時間があったから寄らせてもらった。

そんなら、そうと早めに言ってくれヽば良いのに、いいんだけど、突然こられると、それも電話が来て一分だもんね、びっくりするよ、俺(優は母親だけに俺と言う)だって出かける時もあるよ、留守だったら無駄じゃないか。

優はいつだって、変わりは無いから来なくていいと言うし、今日は、友達と食事で、近くまで来たから寄ったのよ、いいでしょう。

それは別にかまわないよ、まあ、立ってないで座って、そんなに見回してもなにもないよ、ワンルームで狭いから隠れるところは無いよ。

美奈子は、妹からやいの、やいのと言われているし、実際、優も年頃だから良い縁があればと思っていたが本人がそう言う訳だから先に進まない、今日は女の勘で何かを掴んでいく心算だが、これは、気つかれたかな、優は客がいないと言うが、キッチン(と言っても目の前)には、紅茶を飲んでいたばかりのカップが二個あり、一つのカップには半分以上のこっていて、ほのかに湯気が立っている、いま一つのカップの方はあらかた飲み干してある。これで優のほかに誰もいないわけが無い。だが、ドアが目の前に見えてから電話をしたのだし、優の部屋は、二階の一番奥の205号室で、他に階段がない。帰りの客がいればで会うはず、何かトリックがあるのか。疑えばきりが無いが。

玄関というほどではないが、そこには客らしい人の履物も無かったし、優が言うように隠れるところも無い。若しかしたら、優には他に親にも言えない大きな目的があって煩わしい結婚話に付き合っていられないのかもしれない。

それだったら、はっきり言ってくれれば良いのに、優の人生は優のものだから、反対する心算は毛頭無い。

でも、親に相談しても100%反対されることが始めから判っている事であれば、話しても無駄だし、家庭が混乱するだけで、なんのメリットもないと、優はそこまで考えてのことだろうか、夫には優の結婚話について具体的に話したことは無い。妹からの話についても、その都度、報告しているが、夫は、本人次第だが、いい縁があれば良いねと、まるで人任せ。これは娘だったらどうなのかしら。

バラと百合の混じった様な香りが、ほのかにする中で、カップの方を見ながら、そんな事を考えていた。

2013年2月14日 (木)

夕霧に消えた恋 3

優の結婚に関しては、母親の美奈子も理解できないことが多すぎる、第一、叔母が選りすぐった花嫁候補者の写真を四回も見ずに返した、女性に全く興味がない様子も見られない、どうするのと聴いても、今その気がないからと言うだけで要領を得ない。

優に身体的な欠陥があるとは考えられないし、どうなっているのだろうか。

去年の五月に、友人二人から一緒に食事をしようと誘われ参加することにした。

最寄の駅前で待ち合わせをした。お母さん達と言っても、今どきの女性は50代とは言え、3人も集まればどうして、どうしてお洒落で華やかさを振りまき、学園祭の延長気分でいる。

何でも知人のお店でフランス料理の美味しいところがあるからと、案内して頂いた。それなりに小奇麗で感じが良かった。

早めのディナーを食べながら、三人はそれぞれ近況を語り合ったが、女性はこの年齢になると、何れ、何処も同じように孫などのことが話題になる。

今の雰囲気だとこの話題はつや消しになるが、孫がいるようになると、先ほどの華やかなお洒落の割合に人目を憚らず、ズーズーしく、なるらしい。

間切れなく喋り捲る口跡も弁舌さわやかなもので、話題も年齢相応に旅行・音楽や、フアッション、食べ物の美味しい所などを話歩き、政治・経済や、国際問題などには寄り道もしない。

特に、適齢期の子息・令嬢のいるところは、もってこいのターゲットになる。

あら、貴女のところは息子さん、まだでした? 選んでいるのでしょう、早く貰って上げなさいよ、良かったら紹介するわ、折り紙つきよ、でも、いろいろと大変よ。と、ヒヤカシだか何だか、アドバイスされた。

そう言うわけではないが、時間もあるし、お二人のおっしゃる事も、ご尤も。優のアパートはここから一駅先なのでお二人にその旨、了解して頂き、寄っていくことにした。お友達の二人はもっとおしゃべりしていたい様子だったが、次回を約束し別れた。

今日は土曜日、会社は休みだけど、優はいるとは限らない、優には近くへ行ってから電話をしよう、いつも事前に連絡すると、大抵来なくてもよいと言う。でも、近くまで行けば、来るなとは言わないでしょう。

六時過ぎに外に出ると夕霧が立ち込め、来た時と町の景色が変わって見える。とてもロマンチックな雰囲気。霧の立つ条件は、地表と大気の温度差の大きいほど深く立ちやすいし、朝霧・夕霧は秋に立つものと聞いていたので、今の時期にしては珍しいこともあるものだ。

しかし、最近では地球の温暖化とかで、四季の移り変わりも混乱している。野菜だって人間の勝手で季節に関係なく買えるし、いつ何があっても不思議ではなさそうな此の頃だ。ま、それはいいかと、立ち止まって、このロマンチックな感触を楽しんでいた。

快速が通過します、とアナウンスがあり、あと10分も待つのかなと思って霧がさらさら、ひやひやと頬にあたる感触を味わっていたら、近くにある踏み切りの警報機のぼやけた音がなり、鈍行が来た。

霧が深く立ち込めているので、警笛を鳴らしながら入ってきたが、すぐそこへ近ずくまで、電車が見えなかった。ヘットライトの光線で霧の流れが良く見える、結構早く渦巻きながら流れている、霧の粒子にも粗流と細粒があるみたいだが、今、降っているのは綿のようにフワフワと軽い感じ、もっとも霧雨もあるからなど、思いに深けている間に、一駅なのですぐ着いた。

2013年2月12日 (火)

夕霧に消えた恋 2

ただ、変わっているといえば、一つだけ気にかかることは気象情報のことだと言っていた。お天気のことについては異常なほど神経質で、何を基準にしているのか、聴いても笑いながら教えない。確か四月の下旬の頃だったと思う。

残業になってしまい九時ごろ終わる予定だったが、優は、残りは明日朝早く来て間に合わせるからと言って、何か、慌てている感じで飛び出していった。

その時も気象情報をすごく気にしている様子だった。他の同僚も何人かいたけど、優は気象予報士にでもなるのかなと笑っていた。といっていた。

優の縁談には李華子も半ば意地になっている面もあるが、今回で五回目だし、本人については勿論、家族についても素性、素行、性格、家柄まで、完璧に近い調査もしてある。自分の友人の娘だからと言って、仲人口的な手抜きはしない。第一、誰が見ても、申し分の無いはず、今度ばかりは何とかけりをつけないと、せめてその訳を聴かないと、李華子は納得できない。今までの話にしてもみんな非の打ち所のない良家のお嬢さんばかり、せめて写真だけでも見れば気が動くと思うが。姉も説得してくれたらしいし、とにかく明日だ、もっともこの場合、一番気にしているのは、姉なことぐらいは解っている。

李華子は予定花嫁候補のお見合い写真二葉(洋装・和装)と、普段のスナップ写真など数点を揃え十時に姉の家を訪問した。

あら、劉一郎さんは来なかったの、

あの人は、優が緊張するといけないから遠慮するって、

縁談は今回で終わりよ、本当よ、最後の最後になってしまったけど、本当は、このお嬢さんを一番先にお世話しようと思っていたの、だけど訳があって、最後の一人になってしまったわ、でも、其の事については今、聞かないで、今日のことが終わってから話すから。

優君のことだけど、考えて見るとおかしいと思わない、だって優は学生時代からずーと今のアパートでしょう、会社だって通勤に一時間以上掛かるわよ、ここから通えば近いし、家賃は掛からないし、家事一切ないし、こんな良いことないのに、よく飽きずにガンバッテいるよね、留学中だってアパートを明け渡さなかった、住まないのに家賃を二年も払って、今日はそんなこと言わないけど、優の不思議の一つよ。あなたそう思わないの。

そうねー、女性の友達はいるみたいだけど、特別つき合っている恋人らしき人がいる様子はないわ、でもそれは、わたしだって、そう思ってアパートへ行った時もそれとなく、聞いたり、観察して見たけど、気も匂いも何も無かったわ、あれこれ干渉されるのが嫌なんでしょう、もう詮索しない、知らないわ。

                                                                  

貴女がほったらかしにするから、そうなるのよ、今日のことも大きなお世話かしら。

そんなことないわ、感謝しています。所で、向こうさんはどうなの。

ああ、それは大事なことね。華奈さんには、あなたには言わなかったけど、家にあった優のスナップ写真をみせたわ、すみません。

いいわよ、お嬢さんは、華奈さんて言うの、それで、何て言ってた

?

改めていわなくてもOKよ、彼女は、つくづく優の写真を見つめていたけど、何処かで一度、お会いしたような気がするって言ってたわ、縁があるのよ。

優だってキット気に入るわ。

2013年2月10日 (日)

夕霧に消えた恋 1

夕霧に消えた恋

 それは、深い霧の立ち込めた、ある日の夕暮れのことであった。優は、エキゾチックな美少年タイプで、気品ある妙齢の女性(美華)を好きになり、其のうち、お互いに認め合い結婚の約束をした。

しかし、美華は夕霧の立つとき以外は、現れない、この世の人ではなかった。その事を知ったときの優は、ショックで、言葉も無かった。

 金曜日、母から電話をしてくださいと、携帯に着信があった。どうせ、あのことだろうから急ぐこともないし、仕事中だったのでアパートに帰ってから電話をしよう。

 母は、土、日、会社は休みでしょう、貴方はこの所半年以上もご無沙汰じゃないの、たまには家に帰っていらっしゃい、明日はね、李華子叔母さん(母の妹)が来るの、貴方はまたかと思うかもしれないけど、彼女は一生懸命なの、もうこれっきり、これで最後だから、お断りしてもいいから、せめて写真だけでも見てあげて頂戴、と言う、写真を見てから辞退したのでは叔母さんにも悪いし、相手を傷つけることにもなりかねないので、行かないほうが良いのだが、母は、向こう様がそうおっしゃるのだから、ね、もう話はもってこないからって言ってたわ、今回ばかりは李華の顔を立ててあげて頂戴、明日のお昼よ約束して、お願いだから。       その気はないが、そこまで言われれば、優(戸籍上はマサルだが周りの人たちはユウと呼ぶ)も行かないわけにも行かず、承諾した。しかし、困ったな。

優の縁談については、周りからいろいろ話がくる。特に叔母の李華子は、煩いぐらい熱心に推薦してくる。叔母にしてみればそれなりの訳がある、それはそうでしょう。

優はK大学をトップクラスの成績で卒業し、更にヨーロッパへ二年留学し、帰国後、李華子の夫が役員をしている金融機関へ請われて就職した。

会社では、為替関係の分野を強化するため、優には近々外国の支店へ勤務する辞令が出そうな状況にある。そうなると半年、一年では帰られないだろうし、外国ではパーティなど同伴で参加する場合も多い。

独り身は安気だろうが、社会的な信用と言う意味で家庭持ちの方が優位なことは何処の国だって同じでしょう。李華子は夫が、優が結婚して海外支店に赴任することを望んでいると察している。

 しかし、李華子にはどうしても優のことが理解できない所がある。身内だから言う訳じゃないけど、叔母は、自分の目から見ても優は、貴公子然としたハンサムだし、優しいし、感じも良い。李華子の息子は二人とも、早々に結婚し子供までいると言うのに優はどうしてだろう。甥の事をそこまで心配することは無い、縁だよ、そのうち、大きなお世話だと言われかねないよ、と夫は言っているが、世話好きの李華子の性格から、そうはいかない、ましてや甥のことだ、あなただってそう思っているのでしょう。

付き合っている女性がいると言う話も聞いたことがないし。

女嫌い、まさか同性愛 ? それはないでしょう、そんなはずは、これっぽっちもない。断言できる。     去年の秋、取引先の新社屋が完成し、落成式に、夫と共に招待された。優もきていたが、その時のレセプションで、はしたないと思ったが、優についての評判をそれとなく同僚に聞いてみた。同僚の話では、会社でのお付き合いも悪いわけではない。

優は同僚でも羨ましいほど女性にもてるが、特定の人と親しくすることはない。むしろ取引先も、社内の評判も、頗る良いという。

2013年2月 7日 (木)

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