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心と体

2013年8月25日 (日)

夕霧に消えた恋 

S常務には、女性の秘書の方がいますが、第二営業にはその方とは別に男性の、部下だか秘書だか良く判らない社員がいるそうです、社にはその社員の机はあるけど、いる時は少ないし、仕事の内容も他の社員との関連も少ないので、良く判らないそうです、彼に奢ってもらう連中もいるようですが、何しろ不思議な存在のようです、叔父さん知っていますか、S常務の命令で動いているのでしょうが、それは殿様のお庭番みたいなもので、小姓や女官とは役目が全く違う様だと言っていました。

お前の予言した事は現実になってきた事は事実だ、

それで優、Y常務はそんな危ない事をしてまでやる目的と言うのはなんだろう?政界?

いや、Y常務は指し当たって、トップを狙うと思います、その為の実績作りに仕掛けたのです。

政界には行かないでしょう、最終的には、政界、業界、財界を含めたフィクサーにでもなる心算じゃないですか、この事をアドバイスしてくれた友人の話しによりますと、Y常務は、権力や地位のトップに裏でお金に頭を下げさせるのが目的?で、地位や名誉よりお金の様です。

特に秘書の方が相当なもので、Y常務を踊らせていると考えた方が良いかも知れません。

この件では、役員の責任やそれに伴う異動など、社内の大幅な改革を行う事になるでしょう。

叔父は疑問が残るようだったが、優の実績?を信じて電話を切った、今後、事態の進展に伴って、聞いてくると思う。叔父だから出来る事はしてあげたいが、正直言って、厄介な事が一つ増えた。

しかし、秘書は女性だけの仕事だとは思っていた訳ではない、政界なんか凄腕の秘書はいる、でも一流のプロ秘書っているんだなぁ、友達の話しによると、一万円を百万円に見せる魔術師のような風船秘書や国際感覚、いまでは3カ国語は当たり前、将来的に人口の多い国の言葉から順次覚えるのがいいと以前、親父もそう言っていた、兎に角、あらゆる事に精通しているし、人脈作りの名人で仕事に困る事も無い、そう言う人は、担当役員の言いなりには成らない、総務のプロなんだそうだ。

大体、現場や下々の事が判らないトップ人が多い、だから、そう言った秘書も必要なのだろう。

確かうちの会社にも監査法人が入っている、今回Y常務が持ち込んだ融資の額はかなり大きいそうだが、監査法人も見逃したのかな?或る意味、これも問題だ、叔父にも秘書が付いていたと思うけど、どんな人だろう?まぁ、日常の予定がうまく回るようにサポートする、身の回りのお世話?かな。

社内で顔は知っていても、付き合いは無いから個人的な事は、隣の人ぐらいしか知らない、本当はこんな時、役立つ秘書だといいが、無理か。

この先どう動いて行くのか、土曜日、美華に聞かないと分からない。

母から電話があって、さっきからズーット話中じゃないの、優、季華子から聞いたけど、華奈さんとの事どうするの。

どうするって、取り敢えず、付き合って見ることにした。

取り敢えずって、どう言うことなの?

(ああ、そう、と言うかと思ったら、どう言うことかって、母でもこう来るんだから、美華も華奈も、近頃の女性は間髪を入れず反発してくる、皆が皆、そんな事はないと思うけど、一々説明がいるんだからやり切れないよ)

今ね、叔父さんと会社の事で色々話していたのです、難しい問題が起きたので、話しが簡単に済まなかったの、だから取り敢えずなんです。

2013年4月21日 (日)

夕霧に消えた恋 22

よく判らないし、聞きたいことは色々ある、家族構成や、特にどうして亡くなったのか、これは聞く必要があるが、美華は何となく薄くなっていく感じで、このまま消えてしまうと、もう逢えない様な気がして、また来てね。と次回を約束し、この夜は、別れた。

別れると言っても、いつの間にか自然に消えていなくなった。

今度は何時来るかな、もう夜明け前だった。

霊力が溜まれば美華は、来てくれるだろうか。

美華はこの世のものでないことは確かだ。一般に言う、霊魂や幽霊が現れるのは、この世に怨みや、未練がある場合で、その多くは、お化けといった怖いものだと

聞かされていた。

始めは、自分の頭がおかしくなったのか、事実、薄気味悪かったが、美華の霊と話しているうちに、だんだん違和感がなくなってきた。

人間が物事を科学的に、こうだ、あーだと勝手に決め付けているけど、本当は、宇宙や自然について、爪の垢ほども解明されていない、蚊一匹作れないではないか、だから言うわけじゃないけど、こんな世界があっても不思議じゃないと思うようになっていた。

それからの1年ほど美華は、不定期に現れていた。優はそんな毎日が、物たりなく、侘しさが募るばかりであった。

ペナルティのこともあるし、霊界の事も聞きたいし。

 優、お前この頃、変わったなぁ、雰囲気が変わった、

出来たなら、出来たと言えよ。同僚が煩い。

優も恋人が出来たような気分で、生返事をしていた。

逢うにも連絡しようのない恋人では仕方がない、出来れば、逢う為の条件が判ればいいのだが、美華が現れるのはどんな時かと考えて見た。

数回しか逢ってないので統計といっても資料がないが、絞り込んでみると、今までは夕霧の立つ夜、これは間違いない、多分、晴天の日は来ないと思う。

夕霧の立つ夜、この日に決めて待って見よう。

夕霧の立つ条件を調べなければ、これはインターネットで調べる、今日の天気は、取りあえず新聞で調べてみよう。

最近の天気予報は、かなり進歩し、正確になったけど、何とかと、あしたの天気は当てにならないと言うだけあって、ほんと、所による訳だ。

それから一ヶ月ほどあと、その日は、どんよりと曇って気圧のせいか湿っぽく、あたりが澱んだ夕暮れだった、初夏の生暖かい、けだるい感じの中で、仕事が終ると、申し合わせたように、みんな同時に帰った。

ドアを開けると、バラの香りがし、美華が来ていた。驚いたが、そう、美華は霊だから、いつでも自由に出入りできる、キーの必要はない訳だ。

ソファーベットに、ちょこんと座っている。

どんなペナルティがあるかも知れない、自然のルールに違反してまで、逢いに来てくれた心根が、いじらしく、優は胸がこみ上げて、涙が出そうだった。

コンビニで買ってきた夕食は後で食べることにして、早速、この前、聞きたかったことを、聞いてみよう。

その前に、もう知り合ったのだから、僕のことを優と呼んで下さい、僕も貴女のことを美華と呼びますが、いいですか、と聞いたら、いいことになった。

霊力について、もう一度、尋ねて見た。

美華は、霊歴が浅いので深くは判りませんが、

と前置きし、

本当は、霊力のことより、霊そのものって、どんなの?について美華が感じたことを伝えたいと思います。

美華が感じている霊の世界は、美華だけのものかも知れません。

現界のように、物が有って其処に住んでいる訳ではないし、体がないので必要なものは何もない、だから此の前、優に全部、置いてきたって話したでしょう。

2013年4月18日 (木)

夕霧に消えた恋 21

美華さんはどうして見えるのですか?

美華さんはどうして僕の所へ来たのですか?

美華の話 その1

優さんの質問に、此の界に来て判った事をお話します。

あの写真を写した時から3年過ぎましたので、それなりに、年をとっています。

あの写真の時の方が、思い出してくれると思ったから、あの時の装いで来ました。霊界に来てから未だ1か月しか過ぎていません。

殆ど全部の霊は、霊界に来るとき、現世のもの全て(権力、地位、名誉、財産、思い考える事など)を置いてきます。それは当たり前のことで、それは、何方が決めた事でも、ルールでもありません、自然にそうなっているのです。

現世で体が生きて行く為に必要だとされているものは、霊にとっては、要らない邪魔なものです。

美華は、自然の常識に違反し、優さんへの想いをどうしても置いて来られなかったし、心の中から抜くことも出来ず、逢いに来てしまったのです。

自然に違反する事がどんな結果になるのか、今は判りませんが、このままで済むとは思えません。

なぜなら、霊は、このような事はしません。美華は現世にいた時、物語の中で、現世での未練や想いを捨てきれず、霊界まで持ち込んだ霊が現世に現れた話を聞いたことがあります。

美華がそうなると思っていませんでした。この先どうなるのかも、今、判りません。この事については判ってから、お話しします。

私は霊力よって姿を見せる事も、見たいものを見ることもできるのです。でも、私が見せることが出来るのは、特定の人だけです。意思の会話も、バラの香りも、気配を感じさせるのも霊力です。

霊力は現世では、超強力な気のようなものです。

霊力を持っている霊は少ないし、霊力は個々の霊によっても違います。

現世では霊力や、超能力のようなものに興味があるようですが、霊界で霊力を使うことが殆どありません。必要がないといった方が良いのかもしれません。

若しかしたら、それは此処の界の事で、此処の他にも界が在るのかも知れません。

そうだとすると、美華には、現世から此処へ来た瞬間が判らないので、此の界へ来た理由や、他に界があるとしても、其処の様子など知りようがありません。

そして、これから先の事も今は判りません。

霊力は蓄電池のようなもので、連続して使っていると、だんだん少なくなるそうです。

美華は、あなたにお会いする為には姿を現すことが必要です、それで霊力を使います。でなければ、霊力なんて要らないものです。

此処にいるために、やらなければならない、仕事の様なものや、ルールのようなものもありません。

この界にいる?霊は、何にもいらない『空』なんです。美華は、この界に来るとき優を想う心を捨てきれず、持って来てしまいました。だから美華は『空』になれなかった大バカです。

だんだん解ると想いますが、『空』になれない霊はこの界に居られないようです。

居られなくなると言う意味は、美華には判りません。

2013年4月14日 (日)

夕霧に消えた恋 20

ドアの所から瞬間に移動したのだ、やっぱり幽霊だ、間違いないと思った。

優と壁の間は人の通る隙間はないし、女性に触れた記憶も、感触もない。

つまり、人間技ではない現象が現実に起きた訳だ。

殆ど白に近い銀色の靴も、土間に揃えてある。

この靴を履いてきたのかな?

幽霊には足がないと聞いていたけど、靴があるのだから足だってあるだろう。

靴を持って見ようと思ったが、気味悪いのでやめた。

歩くところを見てないが、移動することは確かだ。瞬間的に移動するのかな?

かなり質量感のある女性の立体画像に紗がかかった感じで、ソファーベットに掛けている。

変な表現だけど、妖精(女性)のマネキン人形が生きているみたいだ。

それにしても、優雅で気品があるって言うのかなぁ、見たことの無い美人だ。

ほのかな、そして淡いバラの香りがして、部屋の中がなんとなく、華やいだ雰囲気に包まれた。

たしか、何処かで逢ったような気がするけど、住所も名前も知らないし、何で俺の所へ来たのだろうか?

単純に考えれば、俺を好きになってくれたんだと思うけど、何かの因縁があっての事だとすれば、それこそことが面倒だ、そんな事だったら、言葉は悪いが早々に退散することを考えた方がいいかも知れない。

ロンドンへ行った高3の時、親父は、千一夜物語を引き合いに出して言っていたが、俺も美華の誘惑?から恙なく逃れる事が出来るかな?

相手が霊では、逃げても恐らく駄目だろうな。

今の時点であまり深く考えないことにしよう。

これから、聞いてみよう、名前は何と言うのだろう。

僕は優と言います、あなたは?

 

美華といいます。 

はあー、なるほど、口は動いてなかったし、声もでなかったが、解った。

夢の中で会話をしているみたいだ。

この前は、何を聞いても返事がなかった、俺が信じていなかったからかな?

いいお名前ですね、何処かで、お会いしましたか。

あ、そうでしたか、あなたが一年生の時、秋の文化祭で、友達と一緒に写真を撮った、あなたと、僕が真ん中に入っている、ああ、覚えていますよ。

友達が、すごい美人の女子大生がいるから行こうと、引っ張られて行った時の、あなたでしたか。 

まさか、あの時の方が、僕の所へ、いいえ、この世の方で無いことは、判りました。

この前は、夢を見ているのか、別次元に入り込んだかと、悩みました。

ええ、オカルトのことは聞いていましたが、ありえない事と、信じていませんでしたが、もう大丈夫です。今日で、納得できました。

現世から亡くなっても、時と場合によっては現れる事ができる訳ですね。

何とか、お会いしたいなぁと思っていましたが、卒業やら就職やらで、忘れていました、すっかり忘れていたのではありません、今日再会?再々会ですね、本当に嬉しく思います。

僕が4年生の時でしたから、もう3年前になりますね、でも、つい昨日のように思います、美華さんは余り変わっていませんね。

そちらの世界では、その時のままで年はとらないのですね、普通は体が亡くなったのだから、姿も見えないはずでしょう?

2013年4月11日 (木)

夕霧に消えた恋 19

それとも世にいう狸か狐に化かされたのか、いやいや、この都会に、人間さまを化かす様な動物がいるか、バカな。それにしても嘘じゃない。

第一、我が家では日常、明らかに作られたバーチャルなどは別にしても、オカルトや、非科学的なことは、話題になる事はないし、信じてもいなかった。

見るテレビ番組も殆ど決まっている、と言うより、決められていた。バラエティなどの娯楽番組を見ることも少なく、別な意味で、友達との話題も、オカルト的な事は、聞くのみで、ついて行けなかった。

優はそれで、不平も、不満もないし、生まれてから今まで両親から注意される事はあっても、怒られた記憶も無い。素直な良い子だったのだ。

優は、あの夜の事があってから、仕事が終わるとアパートへ直行するようになった。

「優は此の頃、付き合いが悪いよ」と、同僚にも言われて、気にしていたが、駅を降りるたびに、あの霧の夜に出会った女性のことが、何となく懐かしく思い出され、忘れることが出来なかった。

あの時から二週間ほど過ぎた金曜日の退社するころから霧が立ち込め、だんだん深くなってきた。

優は、あの夜の事を思い出し、若しかしたら、会えるかもしれないと、期待して駅を降りたが、いなかった。

アパートまで残念な思いで、あれは、やっぱり夢だったんだ、俺もどうかしていると、独り言をいいながら、二階への階段を上った。二階への階段はこれしかない、以前、消防から非常階段を設置するよう指導があったと聞いていた。

火事になって逃げることにでもなれば雨どいでも利用すれば、何とかなるだろう。

そんなことを考えながら、階段を上っていると霧の流れに乗って、微かにバラの香りがした。

優の部屋は一番奥なので、階段を上った所からは、深い霧のため良く見えないが、今、確かにバラの香りがした。若しかしたら、近くに、あの女性がいる、間違いない。優は立ち止まって周りを確認した。この前もバラの香りがした。

心臓が早鐘のようにドキドキ音を立てて鳴った。

もう、どうでも良かった、ゆっくりドアに近づくと、霧の中にボンヤリと妖精のように女性の姿が浮かび上がって見えた。

この前に逢った時と同じ白いワンピースを着て優を見て微笑んでいる、あの時と同じであった。

俺は、また、別世界へ引き込まれたのだろうか。

人間には、眠って見る夢があるし、想像する夢もあるから、生きる希望もある。想像する夢は、思い描く事であって、それが実現できるか、どうかは別として、現実ではない。

でも、そんなことはない。

それじゃ今、ここに立って居る女性は、一体、何者だろうか。これは間違いなく現実だ、抓って確認することもないだろう。

ドアを開けた時、確認の意図があって、触れようとしたら、女性は触れさせないように、一歩、後ろに、はなれた。この前は腕を組んできたのに。

この前は半分夢だと思ったが、よし、明日は休みだし、今夜は、朝まで掛かけて、何が何でも、正体を掴んでやる。

そう思うと、気持ちも落ち着いて、興味も湧いてきた。

玄関と言うより、部屋に続いている60cm×90cm程度のたたきの土間に入り、後ろを振り返ると、いないおや? 何処へ行ったのかな、優は外を見回したが霧も深いし見えない、霧が入って来るのでドアを閉めた。

やっぱり俺は頭がどうかしているのかと思い、頭を叩きながら室内を見ると、なんと既に女性はソファーベットに掛け、優を見て微笑んでいる。

2013年4月 7日 (日)

夕霧に消えた恋 18

出来るかぎり、皆に迷惑も、心配も掛けたくない。

 それは、3年前の9月の中ごろだった。

午前中、仲の良い同僚から明日、休みだし、就職2年目で仕事にも慣れてきた所だ、一寸と、その辺へ寄って行かないかと、誘われ、いいよと、気軽に、約束したが、急に支店の事で会議がはいった。結局、残ることになり、8時頃まで掛かった。

明日は休みだし、家は近いので、電話して、たまには帰ろうかなと思った。

今のアパートには大学に入学以来、6年も世話になっている、両親も帰って来いと言うし、会社も近いのでアパートにいる理由がない。第一、家賃がいらない。

どっちにしても、近々、帰る心算でいた。

只、帰ると必ず出るのが結婚話だ、特に叔母の熱意が相当なもので、半強制的に押し込まれそうな勢いだから困る。やりたい事もあるし。

やっぱり今日はやめておこう、それに何となくアパートの方に気が引かれる思いがする、そんな事をごちゃごちゃ考えているうちに、何時もの電車に乗ってしまった。

人の運命というのは判らないもの、今更どうにもならないが、優はこの日、家に帰っていれば事態は変わっていたかも知れない。

電車に乗る頃から急に霧が立ち込めてきた。周りがぼやけて、ロマンチックな雰囲気だった。

急ごしらえのような感じの駅で、改札をでると、すぐ道路。何気なく見ると改札の際に、西洋人形のような女性の顔が浮かんでいる、お化けかと思った。

霧のため良く見えなかったが、近付いて見ると、真っ白い少し長めのワンピースを着た女性だった。

道理で、この霧の中、白いものを着て、離れれば顔しか見えない訳だ。

恋人に逢ったような気がして、ドキッとした。

女性は何となく微笑んだので、優も目礼して通りすぎた。10メートルほど歩いたとき、なにげなく腕が重く感じたので、脇を見た、何と先ほど見た白いワンピースを着た女性が優に腕を組んで微笑んでいるではないか、びっくりして一瞬、身をひいた。

しかし、女性は、腕に掴まったままでいる、なのに、優は掴まれている感じがしない。

おかしいな、と思いながらも、若い美人だし、霧が深いので人目が気にならないし、悪い気がしなかった。

アパートまでもうすぐなので、どうしよう。

何処かで逢ったか、見たような気もする。

あのう、あなたとは何処かでお会いしたような気が致します、失礼ですが、何方でしたでしょうか。

と、営業言葉で言った。

女性からの返事はなかった。

何を聞いても、女性は、微笑んでいるだけで、何も話さなかったし、声も出なかった。

アパートの前に来て、女性の手は抜けるように優から離れ、立ち止まった。

そして、今来た道を帰えろうとした。も一度、会いませんか。と言うと、二三歩のところで振り返り、頷いたように微笑んだ。

優は送り返そうかと思って、近付いたが、女性は深い霧の渦に吸い込まれるように消えて行った。

女性の去ったあと、霧の中にはバラと微かに百合の香りが漂っていた。

 優は、霧の中で、狐につままれたように、ぼんやりと、霧に濡れた髪の毛から雫が滴り落ちるまで、立ち尽くしていた。

しばらくして、霧に濡れた為か寒くなり、我に返った。アパートに入る頃に少し風が出て、霧も消えてしまい、現実の世界に戻った。

今のは何だったのか、俺は、夢を見ていたのだろうか、

2013年4月 4日 (木)

夕霧に消えた恋 17

大きく言えば、地球上では、言うまでもなく、生き物が、生きるために戦う場だ。

まして、人間の自由経済社会においては、後のことは別にしても、その戦いに勝つことが絶対だ。理想や、主義主張は自由だが、敗者の論理なんて失笑を買うだけだ。

長話をするつもりはないが、日本は、世界を相手に戦っている。今後も益々、世界を相手に戦うしかない。

その戦いに勝つには、自分の国を強くすると同時に、戦略的に前もって、相手国を知ることが重要だ。

相手を知ることの第一番は、目の前の敵であることは間違いないが、しかし、遠周りのようだが、相手国の文化を知ることだ。

相手国の文化を知るには、その国の言葉がわかる事、つまり、会話が出来ることだ。

これからの国際分野では、母国語の他に2~4カ国語の出来ることが要求されるようになるだろう。

優がいやなら、無理しなくてもいい、結論から話そう、ロンドンへホームステイに行かないか、今すぐ返事しなくても良い。

ヨーロッパは広いが、なぜイギリスか、判るよな、言うまでもないが、英語は国際語だ、しかし、それ以上にイギリスから学ぶ点があるからだ。

それはね、お前も知っていると思うが、17~18世紀にかけて、イギリスの上流家庭では、子弟をフランス、イタリアなどヨーロッパ各国へグランドツアーと称する旅行に参加させた。

期間は数年に及ぶ時もあったそうだ、目的は、世界に通用する人材を育成する為に、各国の文化に直接触れさせようと言う訳だ。

今は、旅行期間など、その当時と変わっているだろうが、基本的な考え方は同じだ。観光旅行も悪くないが、その国の人たちが、日常どんな生活をしているか、直接見られるホームステイは一番よい。

外国旅行と言えば、イギリス人は他国の文化を勉強に行く、日本人は観光に行く、全員ではなくとも、これだけ違う。

ついでに言っておくが、行くときは、ノートとペンを忘れるな、勉強に行くのだから、毎日一定時間、英語を教わること、そして、暇があったら、ナショナル美術館へ行って来ると良い、確か入場無料だったと思う。

話があるというから、どんな話かと思っていた。そう言う事か、結構、要求があるんだ、その話は母から、それとなく聞いていたので、驚くこともなかった。

父は、その必要性を父らしく医・科学的に説明した、つまり、脳細胞が記憶するキャパシティーの80%は、生きるために、既に使用され埋まっている、それは、これからの人生を旅する上で、何かに遭遇した時や、生活の為に問題を解決する基本的な知恵であり、物指しだ、動物的本能だけで生きるのなら、それだけでもよいだろう。しかし、人間はそれ以上を望むものだ。残りの20%には、今までの基礎知識の更なるレベルアップや、多少の修正、専門的知識の習得など、実社会で戦うノウハウを書き込む。

脳と言うハードディスクには、若い今のうち、つまり、脳の柔らかいうちに入力した方が良い。

最終的に脳が満杯になるには55才だそうだ。

個人差はあるが、重要なのは、凡そ25才までだと言われている。

更に、書き込む情報の質によって、人生が決まると言っても過言ではない。

一般に、脳は人生行路を旅する上で、何か障害物があると、今までに潜在意識に書き込まれている自動制御装置が作動し、それを解決する為に対応する。

もし、脳が備えている能力以上の問題が発生し、間違った判断を下したため、大きなダメージを受けると、今までの物指しが違っていたことに気が付き、修正しようとするが、一度、書き込んだ情報は容易に変更や削除することはできないから、やっかいだ。

もう一度、言うが、脳による、外部からの情報処理や、環境の変化に対応する場合は、入力されているノウハウにより、オートマチックに作動し、最良な方法を選択し、的確な行動を起こす。

例えば、車の運転でも、初心者は、ブレーキだ、アクセルだと、気を使うが、慣れて来ると、状況によって自然に手足が動くようなものだ。

時々、事故を起こしたり、違反をする人は、脳に安全運転のノウハウがキチット入力されていない証拠。

自然といえば、バランスの上に成立する。自然ほど有難いものはないが、バランスが保てなくなると、自然災害など、大変なことになる。

自然とは絶対な生き物だと言える。

この事は、国際社会も同じで、アンバランスになると、国家間では戦争。国ではデモ、革命。企業ではストライキ、倒産。社会では犯罪。家庭では暴力・離婚。人体も病気、全てアンバランスが原因だ。

今現在、人間が自然のバランスを破壊し、人間社会も格差が広がっている。

アンバランスは自分の意見を相手に押し付けることから始まる。

優が今後、個人的に注意しなければならない事は、女性との付き合いだ、千一夜物語の序話にも、「俺は恋愛しても、のめり込む事はない」何て勇ましいことを言うな、まことに、「男にして女らの誘惑より、つつがなくのがるるを見るは、世にまたとなき奇跡なれ。」と書いてある、と言っても、そういかないのが、世の常かも知れないし、戦う時も戦略的には、自分がダメージを受けない程度に勝ちを譲る場合もあるしね。

百聞は一見に如かずと言うだろう、行って来い。

父の話の間に、母はお茶を入れ替え、最期はコーヒーになった。

優は、バラの紅茶だったよね。

人間は、体が生きるだけじゃなく、心で生きるのだよ。

長い、父の話がつづいているけど、要約すれば、今のうちに英語を勉強しておけ。と言うことだ。

正論だし、父の話を聞くのも、親孝行のうちだ。

その後、イギリスの先様の事など話してくれた。お説ご尤もと、承知し、細かいことは、母に聞いて貰った。

夏休みに、一ヶ月間、ロンドンへ行って来た、学校で習う英語と、本物では、違いが明らか、それは仕方のないこと。

それより、今、精神的に混乱している時に、父の話を鮮明に思い出すことも、不思議だった。

兎に角、あれからの3年間を整理する事にしよう。

2013年3月31日 (日)

夕霧に消えた恋 16

優は逃げるように帰った。今は、早く一人になりたかった。

予定はあつた訳ではない。今日は、叔母を怒らせないで、こん後、縁談がこないように、つまり、縁談は諦めて頂くよう、お願いする心算だった。

しかし、こんな事って、あるのだろか、キリストの復活を信じる世界最大のキリスト教もあるが。

それは、その世界の話で、一般の人が、思い叶って生き返る、そんな事は有り得るだろうか。いや、絶対にない。それとも、詐欺かマジックにでも掛かったか、それもないだろう。

美奈はこの世の人でないことに付いては、当初は戸惑ったものの、あの(結婚届)件で、世の中には、不思議なこともあるものだと割り切って、オカルト・ショックから、ようやく立ち直りかけた所だった。

別人である事は間違いないが、余りにも似ている、叔母に訊けば、全てが分かるだろが、聞けば後が面倒だし、やっぱり見なければよかった。       

この3年間はその心算?でいた。美華については疑問も持たないし、それ以上、調べることもしなかった。何んで、こんな事になるのか。

この世に居ないはずの恋人が、写真の中にいた。優は信じられなかった。頭の中が、くるくる回転して、何がなんだか判らなくなり、混乱していた。

写真を見て帰る途中、周りの景色が変わって見え、世の中も変わって感じられた。

これはいけない、落ち着いて考えないと、帰ったら、早く寝ることにしよう。

自分の精神状態がおかしくなったのか、それにしても、不思議な事もあるものだ。ただ、世間には似ている人も居るのだと片付けられない事がある、あれもこれも、俺のことを思ってくれてのことだ。

ここまで来れば、オカルトであろうが、何であろうが、逃げるわけにも行かない。

とにかく後日、確認する。アルコールは強くなかったが、今日は飲まずに居られなかった。

紅茶に数滴いれるブランデーをWグラスに一杯のんで眠ることにしたが、中々寝付かれなかった。

過去のことが走馬灯のように、次から次ぎえと思い出されてきた。

父についても、印象にのこっている事は色々あるが特に、高校三年生のたしか7月だったと思う。

話して置きたい事がある、今まで、お前のことについては、母さんに任せてきた、それは正解だった、言うことはない。いや、ややっこしい事ではないから心配することはない、お前の将来について一言だけアドバイスしておきたい、急で悪いが今いいかい。

いいですよ。

父とは、今まで母抜きで話したことは、なかった。

リビングで、改めて父と向き合うと、やや緊張した。母はお茶を入れてきて、

何?親子でそんなにハリキッテ。

いや、特に改まっている訳じゃないよ、優も来年は大学だし、もう十分大人だ、優とは今まで、二人きりで話したことはなかったし、母さんが良くやってくれているから、特にその必要もなかったよ。

しかし、実社会はシビアなものだ、甘えは許されない。優は判っていると思うし、参考にならないかも知れないが、此れからのことを考え、一応話しておく。

父の話は、あらまし、こんな内容だった。

2013年3月28日 (木)

夕霧に消えた恋 15

成人式のとき、姉妹は、父からプレゼントされた、お揃のワンピースを着て参加することにした。

二人が下着になったとき、妹が、

美華は、バラの香りがするね、フレグランス、付けているの?

わたしは、匂うのが好きじゃないの、付けないわ。

美華は妹の胸に鼻をつけ、クンクンして、

華奈だって百合の香りがするよ、百合というより、百合らしい香りだね。何かバラの香りも混じっているみたい。姉妹は、お互いに鼻を付け合っていたが、

華奈は、私だって使ってないわ、でも香りがするね、体臭かしら、双子だから同じ香りがしそうだけど、少しずれがあるのね、美華はバラの女王になったら。

わたしも良い匂いがするって、友達から、言われたことがあるわ。じゃ、華奈は、百合の女王になれば。

美華に聞くけど、気にしないでね、私、感じるんだけど、美華はこの頃、変わったわね。

どうして?

そんな感じがするの。

そんな事ないわ、何時もと同じじゃないの。

嘘だ、私、勘が鋭いの、そうだ、恋人が出来たんでしょう、それに違いない。

冗談はやめて。

でも、美華に恋人が出来たら、その人困るだろうなぁ。

どうして?

だって、美華がその人に誘われた時、もし私が美華の変わりに行っても、判らないわよ、どうする?

今度、誘われたら、華奈が行ってあげる、面白そうね、やって見ようよ。

馬鹿な事を言っては駄目、今は恋人もいないし、そんな事はないけど、でも、華奈のいう様な事が無いとは限らないわね。

もし、それが発展して、結婚しましょう、となったらそれこそ大変よ。

それって、私たち二人で、一人の旦那さんを共有するって言うこと?そんなの嫌よ。

そうでしょう。

その人は、相手が一人だと思っていて、二人がその人を好きになって、諦めきれなかったら、どうする?

取りっこするの。

そんなミステリーな話、やめましょう。

大丈夫よ、始めに逢った時は判らなくても、話している内に違いが判るわ、体と心は別なんだから。

それに、華奈と私は、微妙に匂いが違うしね。

それはいいけど、これからも、秘密はなし、よ。

この頃の姉妹は、他愛ない会話にはずんでいた。

比べることは不謹慎と、批判を覚悟すれば、この二人には、ドラローシュの描いた、9日王女といわれた17才の、レデイー・ジェーン・グレイや、映画、風と共に去りぬ、に出演した、女優ビビアンリーの若い頃を彷彿させるものがあった。

ワンピースは二人のお気に入りで、休みの日などに着ては、シンデレラになったみたいだね、とワイワイ盛り上がっていたが、外出の時は、何かのイベント以外に着ることはなかった。

2013年3月25日 (月)

夕霧に消えた恋 14

話が変わるけど、この際だから全部話しておくね。

先月、有理子に会ったとき、苗字のことが話しになってね、偶然だけど、みんな川が付くの、私のところは有川、あなたの所は高川、有理子の所は南川、この縁が纏まれば、三川会でも立ち上げようかってね。

よく知らないし、どうでも良いけど、川の付く苗字の家は由緒があるんだって。いいえ、有理子が言った訳じゃないわよ、何かに書いてあったの。

優とは別の時にして、近いうち日を見て、華奈さんを連れて来るから、一度、会ってみたら。

私から見ると、姉の美華さんはお淑やかで、落ち着いた感じだった、それは、騒ぐときは同じよ。

華奈さんの方は、明るくて、社交的。

家の人が言ってたけど、優は今、営業でいい成績なんですって、これから、もっと大きな仕事をやるになり、夫婦同伴のレセプションなんかに出るようになると、華奈さんは、打って付け、一級品よ。

ここだからいいけど、あなた、品が悪いわよ。

妹で育つと、そうなりやすいのかな。

少し、せっかちで、おっちょこちょいなのね。

いやーね、それ、私のこと?

そう、あなたのこと。

はっきり言ったわね、でも私、そんな所あるかも、反省するわ。

反省しなくてもいいわよ。それは貴女の個性だし、愛嬌と言うものだから、いまさら反省されると、反ってやりにくいわ、今のままの季華子がいいの、ハイ、華奈さんのこと。

ごめん、ごめん、華奈さんは、そんな事ないわよ。

時と、場所をチャント心得ているわ。

それは、貴女の推薦だから信頼しています。

あの姉妹は特別としても、親子だってよく似るわね、家は、貴女が言ったように、私がそうだからかも知れないけど、子供は二人とも、親にこれと言った相談もなく、あっけなく、さっさっと結婚しちゃうし、あなたの所は、あなたが慎重な性分なのか用心深いのか、優も堅物で、片付かなくて困るわね。

男の子は母親に似るって言うけど、本当だね。

それ、さっきのリベンジですか?

そんな暗い話じゃないわ。

この見合い写真で着ているドレスは、あの子達が成人式のとき、お揃いで作ったもので、生地は絹で、ウエストから下のスカート部分は二重になっていて、内側が二段でフレアもたっぷりある特注したものだそうよ。仕立ては正式なロングドレスだけど、普段でも着られるように、裾丈は膝下5センチほどのワンピース

に調整してあるそう。

なんでも、オランダかなんかヨーロッパでは、7枚重ねのスカートを穿くからと、デザイナーに勧められたといっていたけど、そんなの関係ないよね。

ただ、いつか学校でイベントがあったとき、学友が、華奈は普段でも目立つのに、そのワンピースを着ていると余計に目立つ、私までジロジロ見られるから、嫌だと、いわれたので、余り着なかったそう。

学校でも、あの子達の周りには、いつも学友が群がっていて、にぎやかだった。

男子学生も、あこがれの的だったが、お互いにけん制しあって、誘ったり、言葉を掛ける男の子は少なかったそう。それから、もう5年になる。早いものね。

華奈も25だから、成人式の写真から見ると、大人っぼくなった。

絹の白はエレガントの中でも、きらびやかで、少し派手じゃないの、それに、美華が逝く時、着せたし、など考えたそうだけど、服は別々に作ったのだし、華奈は体形も変わってないし、この服を好きだから、着ることにしたそう。

諦めきれたわけではないけど、三回忌も過ぎた事だし、華奈も自分のことを考えないと、と有理子は言っていたわ。

沈痛な空気が、やっと明るくなってきた。

季華子は出前のソバを食べながら、私はあの子達を子供の頃から見ているけど、この写真を見ても、どっちが、どっちだか、判らないわ。

長いようで、短い一日が終わった。