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2014年8月11日 (月)

ごあいさつ

夕霧に消えた恋は、お蔭様で完結いたしました。長い間、お読みいただき感謝いたします。

 次回は私が子供の頃、寝物語に聞いた昔話でも書いて見たいと思っています。

構想が纏るまで、暫くお休みします、ありがとうございました。

2014年8月 7日 (木)

夕霧に消えた恋 155

華奈どうしたの、それは判るわよ、私だってお父さんだって同じよ、いきなり世界がかわった見たいで何が何だか判らないわ、高川さん所だってそうよ、でも、何時まで考えていても仕方がないわ。

母はそう言うが、華奈はそうも行かない、事故でないことがはっきりすれば、間違いなく美華に連れて行かれたのでしよう。

落ち着いて優の立場で考えれば、美華と架空の結婚した優も、現実の雰囲気にだんだん追い詰められて身体極まっていたのでしょう。

優は決して悪い人と思えないが、華奈は精神的にも肉体的にも大きなダメージを受けた。

あの婚姻届の日付けを見た限りでは、美華は亡くなって、殆どすぐ優のアパートに現れている、余程、想いが強かったのか?

思い出せば時期的にあのスナップ写真を撮った頃から美華の態度が変わったように思う、そうだったら内緒ごとなしねって言ったんだから、相談して欲しかった。

こうなれば天国で一緒になればいいけど、私は、結果的に夫を取られたんだ、霊だからと言って許す訳には行かない、一言、いってあげないと気が済まない、お墓へ行って決着つける。

れから一ヶ月ほど過ぎた頃、華奈は一人で、美華の墓参りをした。

白バラの花束の真ん中に白百合を一本だけ差し込んだ、大きな花束を抱え、例の、絹の純白ドレスを着用し、ロングヘアーを靡かせた華奈の墓参姿は、道すがら、すれ違う人たちは、振り返るほど気品があり、優雅だった。

墓の近くへ来ると霧が立ち込め、物音一つしない静かな中に不気味な雰囲気が漂っていた。

 優はもう帰らないだろう、その事については他の人にはとも角、高川の母にだけは、何れ説明しなければならない時が来る、例え信じなくても、念のため、優と美華の婚姻届はコピーしておいた。

墓前に来た華奈は、優と美華の婚姻届の入った白い封筒を取り出し、捻じって、お線香かわりに点火し封筒はマグネシュームが爆発するようにバッと音を立て閃光し一気に燃焼、華奈は一瞬飛び退いた、華奈は立ったまま、美華の墓石に向かって何かブツブツ言っていたが、いきなり声を出し、

 華奈にはチャント聞こえたの、美華は最後に言ったじゃないの、華奈は私の分も幸せになってね、優さんは、キット、必ず華奈を愛してくれるって、それなのに、どうして優を連れて行ったの、婚姻届まで作って、美華のウソツキ!

と言いながら、持っていた花束を墓石に向かって投げつけた、いつの間にか霧が消えていた。 

 

 

 平成26727

  奥本 康

2014年8月 3日 (日)

夕霧に消えた恋 154

だからね、優さんが帰ってきたら、あなたが居なくて寂しいから、帰るまで実家に帰っていたって言えばいいでしよう、本当の事なんだから。

母さんに寂しいのまで、教えて頂いたのでは仕方がないわね、そうするわ。

 

社長にその旨伝え家に帰ることにした、社長は、

諦めてはいけませんよ、そこはその侭にしておいて、必要な時は何時でもご自由に出入りして頂いて結構ですから、ご安心下さい。

京は、私、高川さんがお帰りになるまで、一緒に住んでもいいかしらと言ってくれ、華奈は嬉しかった。

 

華奈は実家に帰ってから、気の抜けたような日を過ごしていた、両親も華奈の気持ちが判っているので、時間が経つまではと、そっとしていた。

それでも華奈は、その後の捜査情況と警察からの相談したい事について、聞きに行った、警察では、船内は無論のこと、あの時点で船の位置と潮流から考えて漂着物などが無いか確認するよう、沿岸を所轄する署に指示をした、漁協にも協力を要請しているが、今の所、情報は無いと言う、後は、事故の証拠がなければ、近いうちと言う事ではありませんが、何れ失踪と言う扱いにして頂いては如何ですかと言うことだった。

いろいろ事情もおありの事でしょうがと応対は非常に丁寧だったが、警察も他にも事件を抱え込んでいるのに、訳の判らない事件?に何時までも掛かっていられないと言った雰囲気が感じられた。

 

帰りに何気なく優とのことを思い出していた、短い付き合いの中で、優は時々、自然には人の作ったルールなんか通用しない、先の事も人生も決まっている、魂は死なない、魂は何処へでも瞬間に移動する、善も悪も必要だからある、バランスなんだ、とか、難しい事を言っていた。

神隠しって聞いたことはあるけど、ほんと、優は何処へ行ったのかしら?あの里山しかないと思う。

 

マンションに立ち寄り、旅行鞄を整理した所、優の着替えのポケットにサイフが入っていた。

ここにある物は優が帰るまでその侭にしておく心算だが、このサイフは何となく気になる、結婚したとはいえ、私物に無断で手を付ける事を躊躇ったが、サイフを取り出した、小銭入れの中に小さな鍵が入っていた、何の鍵だろう?

鍵は優の机の引き出しの物だった、華奈は、何が出て来るか判らない、妙な気分で、引き出しを開けた。

中には、高川・南川の印鑑が入った封筒と、ノートが一冊あり、ノートの間に白い封筒が挟んであった、封筒には高川・南川の封印もされていた。

何でここに高川・南川の印鑑があるのだろう?何の書類が入っているのかしら?どうしようかと思いながらも、恐る恐る開封した、それは、優と美華のサインがある婚姻届で、日付も記入されていた、華奈は見てはいけないものを見てしまったような気がして、後ろ暗い思いがした。

優は此の世にいない美華と結婚し、どの様な形で付き合って来たのか、経過は判らないまでも、これで

今の今まで、どうしても納得できないことが、これで全てが判ったような気がした。

そうだったのかと思いながらも、優も美華も許せない、しかし、優はもう帰らないと思う、誰にも相談出来ないし、何らかの結論を出さないと、心のやり場がなかった。

2014年7月31日 (木)

夕霧に消えた恋 153

華奈は全てを喪失した様な表情でマンションに帰ってきた、一人で居たいからと言ったが、母は気掛かりだからと付いてきた。

華奈は、会社も退職したし、この事が落ち着くまで動く気がしなかった。

社長は、先生もそうですが、奥様も、そう言った潜在能力をお持ちのようですね、その気になったら何時でも来て下さい、京もサポートしますからと、言ってくれるし心強かった。

数日後、ご主人の捜索をいたしましたが、船内では発見出来ませんでした、平行して海上や海岸も捜索していますが、ご本人や関連する物品は発見できません、今の所は継続していますが、今後の事に付いてご相談いたしたいと思いますので、都合の良い日にお出で頂けませんかと、警察から連絡があった。

 

母は、あなたの事が心配だし、ここに居ても仕方がないから、取り合えず、家に帰りましょう、ここは此の儘にして、そのうち日を見て高川さんと話し合えばいいんだからと言う。

 

優の帰ってくる希望はあるだろうか?帰ってきた時わたしがここに居なかったら?婚姻届はどうするの?もう判らない。

2014年7月27日 (日)

夕霧に消えた恋 152

華奈の指示した事は手順よく進んでいた、京さんが伝えたらしく、社長は先生の一大事と、バスで大挙して来ていた、華奈は心強かった、牧場の人達も何のことやら判らない中でも協力してくれることになった、日暮れまで時間があるからと、女性二人が先頭に立つ、奇妙な捜索隊が出発した。

華奈が考えている場所は、京を探した時と同じ湖で凡その見当が付いていたので、比較的早く目的地に到着する事が出来た。

湖面には霧が一面に漂っていたが、京さんの時とイメージが違って、湖にしては以外に小さく、端々が見渡せる、池か沼といった程度の大きさだった。

華奈は湖に近づいて行こうするのを京は引きとめ、華奈さん、あの霧の中は、異次元の世界で、一度入ったら永久に出られないと思うわ、わたし、この前、そう思ったもの、高川さんは、まだ行った訳じゃないし、キット元気で帰って来ますから、気持ちは判りますが一旦、帰りましょう、霧がだんだん近づいてくるわ、あの霧に飲み込まれたら、私達も危ないわよ、ね、私の言う事きいて。

京は必死に止めたが華奈は、今だったら、まだ大丈夫、自分の夫だから絶対探しますと、池に入って行きかねない様子だった。

京は、湖の方に歩き出しそうな華奈を、男性社員の手を借りて、元、来た方向へ引きずるように連れ戻した、やっとの思いで牧場の近くまで引き上げてきた時、里山は霧ですっぽり隠れていた、あのまま捜索を継続していたら、通信手段はあるものの、遭難に近い状態になっていた、京は冷静だった。

華奈は不承不承、優の消息が掴めないまま、引き上げる事にした、華奈は何となく運命を感じながら、皆さんにご迷惑をお掛けしましたと、挨拶をし、バスに乗った、バスの中では話し声一つなかった。

2014年7月24日 (木)

夕霧に消えた恋 151

船長は、ヘリは来られますが、この船には下りられません、緊急の場合はロープで吊り上げる事になります、それに行く先にもよりますが、着陸場所から先の道路事情など交通の便を考えますと、近港からホバークラフトの様な高速ボートを要請し、目的地に近い港に着けて頂く事をお勧めします、私が手配しますから、と言う。

こんな時は現場を知っている船長の指示に従い、デッキで待つことにし、荷物をまとめた。

大変は事になりました、大したお手伝いも出来なくて残念です、ご主人のご無事をお祈りします、今は船内を捜索中で何とも言えませんが、船での事ですから、現在の状況を海上保安庁に報告する必要があります、その点ご理解、お願い致します、メディアなどはできるだけ押さえるように致します。

華奈は、高速と言うのにこんなに遅いものかとイライラしたが、我慢するしかなかった。

大変お世話になり、ご迷惑をお掛けいたしました、と緊急救助のホバーに乗った。

船は何事も無かったようにボーと汽笛を鳴らし次の港へと向かって行った。

船内に居ないと成れば、海と言う事になる、華奈は必死になって何かないかと、海面を凝視していた、後は当然、海上捜索になるでしょう、でも、優を発見出来なかったらどうなるのだろう、失踪者になるのだろうか?

そんな事、今は考えないにしよう、華奈は夢を見ているようで、現実を信じられなかった。

2014年7月20日 (日)

夕霧に消えた恋 150

華奈はこんな時どうすれば良いか?と思案していてハッと気がついた、それは、京さんの居なくなった時と気分も状況も酷似していた、優は、キットあの里山へ飛ばされた、間違いない、ここでグズグズしていられない、次の寄港のとき下船しよう、そうだヘリを頼んで見よう、ボーイでは話しが通じないだろうから、友人に電話した、

わかった、詳しい事は聞かないわ、すぐ父に相談して、なんとかしよう、と言ってくれた。

家に連絡し、電話は父に代わった。

優さんが居なくなったって?一体、どう言う事なんだ、いま何処に居るんだ?

今、船の中だけど、説明している暇は無いわ、優さんを探しに行くから準備して下さい、行く先は、京さんの時と同じあの牧場よ、わたしは船から直接いく心算だから牧場へその事を連絡しておいて、友達にヘリを手配して頂けるかお願いしたけど、航空法とかで届けがいるんだって、飛べるかどうかまだ判らない、それから京さんの時と同じよ、わたしの作業着もお願いしますね。

私、準備が忙しいから、高川へは家から電話しておいて、そして、折角、来て頂いても家族は山には入れないから家で待っていてください。

あの里山の事は、他の人に話しても判って頂けないので、京さんに相談します、あと必要な事は、わたしが手配します。

落ち着かなければ、冷静に、冷静にと自分に言い聞かせ、メモをしながらテキパキと指示をだした。

両家では事件の内容が判らないまま、華奈の指示に従うしかなかった。

2014年7月17日 (木)

夕霧に消えた恋

華奈はすぐ、係りのボーイに優がデッキに行ったので連れて来てくれる様にたのみ、船室に戻った。

優が出て行った後、船内放送が終わると殆ど同時に、生暖かい湿った空気が、ふわーと流れ込み、微かにバラの香りが漂って来た。

華奈は自分の匂いかな?と思ったが、京さんの事件があった時もこの匂いが付き纏っていた、この匂いは子供の頃から知っている明らかに美華のものに違いなかった、華奈は胸騒ぎがして、船室係りを呼び、優を探すようお願いし、船内放送もされたが、優は見つからないと言う、乗客が1名不明になったとの噂は船内に広がり、一時混乱したが、ご心配ありませんと船内放送があり、落ち着いた。

捜索は他の乗客に迷惑が及ばないよう秘密裏に緊急捜査を開始した、デッキは無論のこと船内も隈なく捜索したが手掛りは全くなかった。

乗務員はサーチライトでの海上捜査も行ったが濃い霧のため何も見つける事は出来なかった。

兎に角、霧が晴れないと、デッキも海も捜索出来ず待機するしかなかった。

華奈はデッキへ行かせてとお願いしたが、危険だからと船室に閉じ込められていた、顔を顰めてどうする事も出来ないもどかしさにイライラして泣き出しそうだった。

捜索は夜通し行われたが、夜が明けて、霧が消えても、優はみつからなかった。

華奈は疲れて、ウトウトし、昨日からの事が走馬灯の様に思い出され、これは夢だ、絶対夢だと思ったが、現実に優は消えてしまった。

2014年7月13日 (日)

夕霧に消えた恋 148

優が出て行って間もなく、ホールの小窓から見える海は、何時の間にか真っ白で何も見えなかった。

汽笛が、ボー、ボーと鳴り続き、船内放送が入った。

お寛ぎの所、大変申し訳ございませんが、お客様にお知らせいたします、今から30分ほど前から急に霧が発生し、時間と共に深くなり、只今、視界0メートルの状態です。

霧の流れは異常に早く竜巻のように渦巻いてデッキは危険な状態です。

この状態での通常運航は出来かねますので、航路より少し沖に出て、碇泊灯を点灯し、停泊姿勢をとりながら船をゆっくり進めています。

ご存知の通り本船の運航に関しましては、最新の運航レーダー装置を搭載し、他の船舶や、位置の確認、海上保安庁への報告など、万全を期しておりますので、航海における支障はございません、ご安心下さい、次の寄港は少々遅れると予想されます。

なお、夜景の見学などは霧のため危険ですから、デッキへの出入り口は閉鎖いたします、デッキにおいでの方は至急船内にお戻り下さい、まもなく出入り口が閉まります、お急ぎ下さい。

その他のショーや、船内施設は予定通り行っておりますので、是非、お楽しみ下さい。

重ねて、お知らせいたします、深い霧のためデッキへのハッチを閉鎖いたしました、特に、夜間は、危険ですから、ご了承の程お願い致します。

2014年7月10日 (木)

夕霧に消えた恋 147

硬くなると踊りがぎこちなくなるわよ、ワルツにする?タンゴにする?

俺、やって見ないと判らないなぁ。

あら、頼りないのね、まぁ、いいわ、組んで見ましょうよ、選手権に出るんじゃないわ、社交だから慣れよ、何とか成るから。

二人でのリハーサルとは言え今まで手も握った事が無かった二人にとっては、ぎこちなく緊張そのものだった、ステップが合わないでよろけると優は無意識に華奈を抱きとめた、その時、華奈の体から微かにバラの香りがして、何となく体が軽くなった、優は美華を感じ、一瞬、入れ替わったかな?と思った、ダンスは華奈の方がはるかに上手だった。

華奈は優に身を任せ、ホールへ行かないで、音楽なしでも、此のまま優と踊っていたかった。

ぼつぼつ行ってみようか、と手を取り合って船室を出た、ホ-ルの左側はカウンターバーになっていて賑わっていた。ダンスをしている人達も場所を考えた品のある身なりで、感じが良かった。

華奈はどこにいても人目を引いた、二人にはパートナーのリクエストもあって忙しかった、何曲か踊った所で優は、

少し飲み過ぎたし疲れた、デッキで風に当たってくる、頭がすっきりすると思う。

私も行く。

ほんの2~3分だから、パートナーのリクエストする人も待っているし、華奈は踊っていていいよ、すぐ戻ってくるから、心配するな。

私も、優とデッキで風に当たりたいの。

優は、華奈の話を聞き流しながら、片手を上げて、じゃ、一寸、行って来るね。

立ち上がっている華奈を制して、ホールから出て行った、華奈は、他に踊っているお客がいても、ここで一人になるのが、寂しいような、悲しいような、何となく不安げに立ったり、座ったり、落ち着かないで、優の出て行ったドアを見つめていた。

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